日本巫女史/第一篇/第四章
ナビゲーションに移動
検索に移動
第四章、巫女の呪術に用いし材料
巫女の呪術に種々なる方法があったように、その呪術に用いた材料にも、亦種々なるものが在ったのである。私はここに是等の材料に就いて述べる考えであるが、その以前において一言すべきことがある。それは、茲に巫女の用いた呪術の材料と云うものの、文献の上からは必ずも巫女とは限られていずして、却って覡男と共通、若しくは覡男に限られたものが相当多く加わっている事である。従って、私の此の記述には、巫女史の範疇を越えて、或は一般の巫術史に渉るような嫌いがあるけれども、我国の文献は屡記の如く、巫女が覡男に征服された後に記述したものであるために、巫女に関するものは至って僅かしか伝えられていないのである。それで止むなく、斯うした態度を執るようになったのであるが、併し見方によっては、覡男の用いたものは巫女も用い、その間殆んど共通していたとも想われるので、敢て此の方法に出た次第なのである。
- 第一節 呪術の材料としての飲食物
米と水—塩と川奈—酒も飴も蒜も蓬も—追儺の豆もそれである - 第二節 呪術のために発達した器具
玉と鏡—剣と比礼—櫛もそれである—幡や幟や幣は言うまでも無い - 第三節 呪術に用いし排泄物
血液と唾液—尿と糞—是等の物は今に呪力ありと信ぜらる—民俗の永遠性を考えよ - 第四節 呪術用の有機物と無機物
笹葉と賢木—樺の木と葦—ししとミコドリ—鵜と蟹—石と土—灰も又呪力があった