日本巫女史/第一篇/第八章

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日本巫女史

第一篇 固有呪法時代

第八章 物質文化に於ける巫女の職務

巫女は職務として、人間を詛う方面と、事象を占う方面との両面を有していた事は屡述した。此の立場に起って巫女の職務を分類する方が、精神文化の物質文化のと分類するよりは妥当であると一度は気が付いたのであるけれども、更に巫女の職務を仔細に考覈すると、啻に此の両面ばかりではなくして、他に刀自として造酒を掌り、収税者として幣帛を取り扱い、交通の保護者として、航海に従事するなどの職務があって、かなり複雑しているので、不本意ながら此の分類を企てたのである。勿論、是等のことは、巫女の本質的の職務ではなくして、単に巫女が社会的に利用されたに過ぎぬのであるとも言えるのであるが、そうなると、詛うとか、占うとかいうことも、又た社会的に利用されたものとも言えるので、愈々その分類が困難になるのである。そこで不充分ではあるが、姑らく此の分類に従って記述することとした。

  • 第一節 戦争に於ける巫女
    アイヌ族も戦争には女が従う—琉球には女は戦の魁という諺がある—内地でも戦争に巫女は附きもの—物部氏と巫女との関係—武士をモノノフと云う原義と物識りの由来—戦争の前途を占う巫女—敵兵を呪詛する巫女—士気を鼓舞する巫女—武力の戦いの先に呪力の戦い—御陣女臈としての巫女—桂姫の陣中における任務
  • 第二節 狩猟に於ける巫女
    我国にも狩猟時代はあった—民間信仰の山ノ神の正体—三河に残るシャチナンジは女神で狩人の守護神—琉球に在るウンジャミ祭と巫女—鹿待つ君が斎い妻—動物に扮する踊りの起原
  • 第三節 農業に於ける巫女
    穀神を殺した古代人の信仰—豊宇賀能売命は巫女か—穀神へ人身御供を捧げる—オナリとしての奇稲田媛—原始農業と女子の位置—農業の神事とトツギ祭—穀神の犠牲となるオナリ—穀神に対する古代人の態度—オナリと嫁殺し田の関係—田植に行う泥かけの意義
  • 第四節 医術者としての巫女
    我国のクスリの語原と巫女—呪術による医療と薬剤を用いる医療—身体を刺傷する医療的呪術—物件を封結する医療的呪術—病魔を驚厭する医療的呪術—神霊の力で病魔を駆除する呪術—供物を薬用とした医療的呪術—薬剤を用いた医療的呪術
  • 第五節 収税者としての巫女
    男の弓端の調と女の手末の調—ヌサの起原は納税—ミテグラも又それである—巫女の収税はヰヤジリの名で行われた—荷前の制度と収税の関係
  • 第六節 航海の守護者としての巫女
    持衰と婦人との関係—焼火明神の由来と巫女—御船の神事と巫女—船霊信仰と巫女—水市社前に売卜の巫女