日本巫女史/第一篇/第六章
ナビゲーションに移動
検索に移動
第一篇 固有呪法時代
第六章 巫女の性格変換と其生活
古代の巫女に関しては、まだ記述すべき幾多の問題が残されているが、それでなくとも第一篇が余りに長くなり過ぎる嫌いがあるので、大体の輪郭だけでも全速力で書いてしまいたいと思う。全体、私が本書を起稿するに際して少しく憂えたのは、記述が第一篇の古代に繁く、これに反して第二篇の中古及び近古に粗く、更に第三篇の近世及び現代に多くして、恰も瓢の如く首尾が太くして中くくりの小なるものに終りはせぬかと云うことであった。これは何人が何の歴史を書くにも共通している悩みなのである。即ち古代の史料と近古現代の史料は、夥しきまでに存するにもかかわらず、平安朝の末葉から鎌倉室町の両期は頗る史料が欠けて居り、更に江戸期になると、是れまた史料の多きに苦しむのが、当然となっているのである。巫女史にあっても、又この支配から脱することが出来ず、遂に憂いは事実となって現われ、到々、瓢の如く首尾が太く中部は細いものとなってしまった。それで茲には出来るだけ簡明に記述を運んで第一篇を終るとする。