日本巫女史/第一篇/第四章
ナビゲーションに移動
検索に移動
第四章、巫女の呪術に用いし材料
巫女の呪術に種種なる方法が有つた樣に、其呪術に用ゐた材料にも、亦種種なる物が在つたのである。私は此處に是等の材料に就いて述べる考へであるが、其の以前に於いて一言すべき事がある。其れは、茲に巫女の用ゐた呪術の材料と云ふ物の、文獻上からは必ずも巫女と限られてゐずして、卻つて覡男と共通、若しくは覡男に限られた物が相當多く加はつてゐる事である。從つて、私の此記述には、巫女史の範疇を越えて、或は一般の巫術史に涉る樣な嫌ひが有るけれども、我國の文獻は屢記の如く、巫女か覡男に征服された後に記述した物である為に、巫女に關する物は至つて僅かしか傳へられてゐ無いのである。其れで止む無く、斯うした態度を執る樣に成つたのであるが、併し見方に依つては、覡男の用ゐた物は巫女も用ゐ、其の間殆ど共通してゐたとも想はれるので、敢て此方法に出た次第なのである。