日本巫女史/第一篇/第七章/第五節」を編集中

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巫女が神託を宣べるに際し、これを歌謡体の律語を以てしたことは屡記した如くである。更に復言すれば、神を身に憑けるために、巫女が<ruby><rb>神招</rb><rp>(</rp><rt>カミオ</rt><rp>)</rp></ruby>ぎの歌を謡い、音楽を奏し、或は起って舞いなどして、愈々神がかりの状態に入って託宣するとすれば、その発するものは<ruby><rb>神語</rb><rp>(</rp><rt>カミゴト</rt><rp>)</rp></ruby>であり、<ruby><rb>祝詞</rb><rp>(</rp><rt>ノリト</rt><rp>)</rp></ruby>であるから、平談俗語を以てせずして、律語雅言であるべきことは、当然である。而して茲に、古代における託宣の詞そのままの形に近いものを伝えたと信ずべき二三の例証を挙げ、然る後に多少の管見を加えるとする。「出雲国風土記」意宇郡の条に、
巫女が神託を宣べるに際し、これを歌謡体の律語を以てしたことは屡記した如くである。更に復言すれば、神を身に憑けるために、巫女が<ruby><rb>神招</rb><rp>(</rp><rt>カミオ</rt><rp>)</rp></ruby>ぎの歌を謡い、音楽を奏し、或は起って舞いなどして、愈々神がかりの状態に入って託宣するとすれば、その発するものは<ruby><rb>神語</rb><rp>(</rp><rt>カミゴト</rt><rp>)</rp></ruby>であり、<ruby><rb>祝詞</rb><rp>(</rp><rt>ノリト</rt><rp>)</rp></ruby>であるから、平談俗語を以てせずして、律語雅言であるべきことは、当然である。而して茲に、古代における託宣の詞そのままの形に近いものを伝えたと信ずべき二三の例証を挙げ、然る後に多少の管見を加えるとする。「出雲国風土記」意宇郡の条に、


: 国引ませる八束水臣津野命詔たまはく、八雲たつ出雲の国は、狭布の雅国なるかも、初国小さく作らせり。かれ作り縫はんと詔たまひて、栲衾新羅の三崎を、国の余りありやと見れば、国の余りと詔たまひて『<ruby><rb>童女</rb><rp>(</rp><rt>オトメ</rt><rp>)</rp></ruby>の<ruby><rb>胸鉏</rb><rp>(</rp><rt>ムネスキ</rt><rp>)</rp></ruby>とらして、<ruby><rb>大魚</rb><rp>(</rp><rt>オフヲ</rt><rp>)</rp></ruby>の支太つきわけて、幡すすき穂ふりわけて、三つよりの綱うちかけて、霜つづらくるやくるやに、河船のもそろもそろに、<ruby><rb>国来</rb><rp>(</rp><rt>クニコ</rt><rp>)</rp></ruby>、国来』と引き来縫へる国は<ruby><rb>去豆</rb><rp>(</rp><rt>コヅ</rt><rp>)</rp></ruby>の打絶よりして、八穂米杵築の御崎なり云々(中山曰。読み易きよう仮名交りに書き改めた)。
: 国引ませる八束水臣津野命詔たまはく、八雲たつ出雲の国は、狭布の雅国なるかも、初国小さく作らせり。かれ作り縫はんと詔たまひて、栲衾新羅の三崎を、国の余りありやと見れば、国の余りと詔たまひて『<ruby><rb>童女</rb><rp>(</rp><rt>オトメ</rt><rp>)</rp></ruby>の<ruby><rb>胸鉏</rb><rp>(</rp><rt>ムネスキ</rt><rp>)</rp></ruby>とらして、<ruby><rb>大魚</rb><rp>(</rp><rt>オフヲ</rt><rp>)</rp></ruby>の支太つきわけて、幡すすき穂ふりわけて、三つよりの綱うちかけて、霜つゞらくるやくるやに、河船のもそろもそろに、<ruby><rb>国来</rb><rp>(</rp><rt>クニコ</rt><rp>)</rp></ruby>、国来』と引き来縫へる国は<ruby><rb>去豆</rb><rp>(</rp><rt>コヅ</rt><rp>)</rp></ruby>の打絶よりして、八穂米杵築の御崎なり云々(中山曰。読み易きよう仮名交りに書き改めた)。


これは有名なる国引きの一節であって、従来の研究によれば、此の国引きをした八束水臣命は、素尊の別名であると伝えられているのであるが、私には信じられぬし〔一〕、よし素尊であったとしても、童女の胸鉏とらして以下の文句は、どうも巫女が何かの場合に歌謡体で託宣した事のあるものを茲に転用したものと想われる節があるので、姑らくその一例として挙げるとした。次は一度前に梗概だけは引用したことがあるが「播磨国風土記」逸文に、
これは有名なる国引きの一節であって、従来の研究によれば、此の国引きをした八束水臣命は、素尊の別名であると伝えられているのであるが、私には信じられぬし〔一〕、よし素尊であったとしても、童女の胸鉏とらして以下の文句は、どうも巫女が何かの場合に歌謡体で託宣した事のあるものを茲に転用したものと想われる節があるので、姑らくその一例として挙げるとした。次は一度前に梗概だけは引用したことがあるが「播磨国風土記」逸文に、


: 息長帯日女命{神功/皇后}新羅の国を平らげむと欲して下り坐す時に、衆神に祷りき。その時、国堅大神の子、爾保都比売命、国造石坂比売命に<ruby><rb>着</rb><rp>(</rp><rt>カ</rt><rp>)</rp></ruby>かりて<ruby><rb>教</rb><rp>(</rp><rt>サト</rt><rp>)</rp></ruby>しけらく、『好く我が前を治め<ruby><rb>奉</rb><rp>(</rp><rt>マツ</rt><rp>)</rp></ruby>らば、我に善き験を出し、<ruby><rb>比々良木</rb><rp>(</rp><rt>ヒヒラギ</rt><rp>)</rp></ruby>ノ<ruby><rb>八尋桙底不附国</rb><rp>(</rp><rt>ヤヒロホコソコツカヌクニ</rt><rp>)</rp></ruby>、<ruby><rb>越売眉引国</rb><rp>(</rp><rt>ヲトメノマユヒキクニ</rt><rp>)</rp></ruby>、<ruby><rb>玉匣賀々益国</rb><rp>(</rp><rt>タマクシゲカガヤククニ</rt><rp>)</rp></ruby>、<ruby><rb>苦尻有宝白衾新羅</rb><rp>(</rp><rt>コモマクラタカラアルタクフスマシラキ</rt><rp>)</rp></ruby>ノ<ruby><rb>国</rb><rp>(</rp><rt>クニ</rt><rp>)</rp></ruby>を、<ruby><rb>丹浪</rb><rp>(</rp><rt>ユナミ</rt><rp>)</rp></ruby>もて、ことむけ賜はむ』と教え賜ひき云々(大岡山書店本の「古風土記逸文」に拠る)。
: 息長帯日女命{神功/皇后}新羅の国を平らげむと欲して下り坐す時に、衆神に禱りき。その時、国堅大神の子、爾保都比売命、国造石坂比売命に<ruby><rb>着</rb><rp>(</rp><rt>カ</rt><rp>)</rp></ruby>かりて<ruby><rb>教</rb><rp>(</rp><rt>サト</rt><rp>)</rp></ruby>しけらく、『好く我が前を治め<ruby><rb>奉</rb><rp>(</rp><rt>マツ</rt><rp>)</rp></ruby>らば、我に善き験を出し、<ruby><rb>比々良木</rb><rp>(</rp><rt>ヒヒラギ</rt><rp>)</rp></ruby>ノ<ruby><rb>八尋桙底不附国</rb><rp>(</rp><rt>ヤヒロホコソコツカヌクニ</rt><rp>)</rp></ruby>、<ruby><rb>越売眉引国</rb><rp>(</rp><rt>ヲトメノマユヒキクニ</rt><rp>)</rp></ruby>、<ruby><rb>玉匣賀々益国</rb><rp>(</rp><rt>タマクシゲカガヤククニ</rt><rp>)</rp></ruby>、<ruby><rb>苦尻有宝白衾新羅</rb><rp>(</rp><rt>コモマクラタカラアルタクフスマシラキ</rt><rp>)</rp></ruby>ノ<ruby><rb>国</rb><rp>(</rp><rt>クニ</rt><rp>)</rp></ruby>を、<ruby><rb>丹浪</rb><rp>(</rp><rt>ユナミ</rt><rp>)</rp></ruby>もて、ことむけ賜はむ』と教え賜ひき云々(大岡山書店本の「古風土記逸文」に拠る)。


これは言うまでもなく、国誉めの詞の類いであって、我が古代の文献には、相当多く散見するところである。而して長句と短句とを巧みに交えて措辞を修めたところは、一種の歌謡としても立派なものと信ずるのである。更に第三例としては、「皇大神宮儀式帳」に、
これは言うまでもなく、国誉めの詞の類いであって、我が古代の文献には、相当多く散見するところである。而して長句と短句とを巧みに交えて借辞を修めたところは、一種の歌謡としても立派なものと信ずるのである。更に第三例としては、「皇大神宮儀式帳」に、


: そのかみ、宇治の大内人仕へ奉る宇治の土公等が遠つ祖大田の命を、いましが国の名は何ぞと問はし給ひき。これの川の名は、さこくしる伊須々の川と申す。これの川上に好き大宮処ありと申す。すなはち見そなはして好き大宮処定め給ひき。『朝日の来向ふ国、夕日の来向ふ国、浪の音の聞えぬ国、風の音の聞えぬ国、弓矢鞆の音の聞えぬ国と大御心鎮り坐す国』と、悦び給ひて大宮定め奉りき(中山曰。武田祐吉氏著の「神と神を祭る者との文学」所載の訳文に拠る)。
: そのかみ、宇治の大内人仕へ奉る宇治の土公等が遠つ祖大田の命を、いましが国の名は何ぞと問はし給ひき。これの川の名は、さこくしる伊須々の川と申す。これの川上に好き大宮処ありと申す。すなはち見そなはして好き大宮処定め給ひき。『朝日の来向ふ国、夕日の来向ふ国、浪の音の聞えぬ国、風の音の聞えぬ国、弓矢鞆の音の聞えぬ国と大御心鎮り坐す国』と、悦び給ひて大宮定め奉りき(中山曰。武田祐吉氏著の「神と神を祭る者との文学」所載の訳文に拠る)。
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我国の文学は是等の類例が示しているように、先ず叙事詩によって始められていて、然もそれは言い合わしたように、悉く第一人称となっている。而して、此の事は、独り我が内地ばかりでなく、アイヌにおいても、琉球においても、又た同じ経路を歩んできたものである。アイヌに就いては、金田一京助氏はその著「アイヌの研究」詩歌の条において、概略左の如く論じている。
我国の文学は是等の類例が示しているように、先ず叙事詩によって始められていて、然もそれは言い合わしたように、悉く第一人称となっている。而して、此の事は、独り我が内地ばかりでなく、アイヌにおいても、琉球においても、又た同じ経路を歩んできたものである。アイヌに就いては、金田一京助氏はその著「アイヌの研究」詩歌の条において、概略左の如く論じている。


: 総じてアイヌは歌を嗜む民族である(中略)。裁判のことばが全部歌でのべられる。大酋長の会見も歌で辞令を交換する。神への祈祷にも、凶変の際の儀式にも、喜びの際の挨拶にも、皆曲調をもつことばづかいをする(中略)。さて最後に、アイヌ文学の特徴である此の第一人称説述の形式は、何を意味するもので、如何にして出来たと解釈すべきものであろうか(中略)。アイヌはユカラは寧ろ男子のもので、オイナは寧ろ女子のものである。そしてアイヌでは婦女子は神へ祈祷することは禁忌であるが、その代り神の<u>よりまし</u>となって其託宣をのべる役をもつのである(即ち巫は女子の専務)。アイヌのオイナが女子に依って伝えられ、そこでそれが第一人称の叙述に成っているということは、即ち神自ら女子に憑って述べた(巫は歌でのべる)ものを伝え伝えた形になっているものに相違ないのである云々〔二〕。
: 総じてアイヌは歌を嗜む民族である(中略)。裁判のことばが全部歌でのべられる。大酋長の会見も歌で辞令を交換する。神への祈禱にも、凶変の際の儀式にも、喜びの際の挨拶にも、皆曲調をもつことばづかいをする(中略)。さて最後に、アイヌ文学の特徴である此の第一人称説述の形式は、何を意味するもので、如何にして出来たと解釈すべきものであろうか(中略)。アイヌはユカラは寧ろ男子のもので、オイナは寧ろ女子のものである。そしてアイヌでは婦女子は神へ祈禱することは禁忌であるが、その代り神の<u>よりまし</u>となって其託宣をのべる役をもつのである(即ち巫は女子の専務)。アイヌのオイナが女子に依って伝えられ、そこでそれが第一人称の叙述に成っているということは、即ち神自ら女子に憑って述べた(巫は歌でのべる)ものを伝え伝えた形になっているものに相違ないのである云々〔二〕。


琉球のそれに就いては、伊波普猷氏は、その著「おもろさうし選釈」の前文において、大略左の如く論じ、歌謡の巫女によって発生したことを言外に寓されている。
琉球のそれに就いては、伊波普猷氏は、その著「おもろさうし選釈」の前文において、大略左の如く論じ、歌謡の巫女によって発生したことを言外に寓されている。
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