日本巫女史/第三篇/第二章

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日本巫女史

第三篇 退化呪法時代

第二章 当代に於ける巫女と其の呪法

室町期の末葉から江戸期を通じて、巫女に関する文献は、決して尠いものでは無い。古文書、寺社関係の記録、地誌、随筆、稗史、小説、川柳等を数えると、私の披閲しただけでも、寧ろ其の多きに驚くほどである。

併しながら、文献のみで、巫女及びその呪術の総てを知ることは、絶対に出来ない。秘密を尚んでいた彼等は、常に語ることを避けていたし、それに文字に乏しい彼等にあっては、自身で書き残したものなどは、只の一片すらも伝わっていないのである。

従って、彼等の全体を知るには、各地方に存している民間伝承なり、巫女の実際の生活なりを見聞した報告に由る必要があるので、私は前にも言った如く、全国の未見曾識の学友に対して、此の事情を告げて、報告を煩した。然るところ、私の期待はやや成功して、文献よりは報告の方に、却って学問としての価値もあり、併せて実際の呪術や生活を知ることが出来た。而して茲に、当代の巫女とその呪術を記述するに際し、文献と報告との二つに区別して、筆を執ることとした。

  • 第一節 文献に現われたる各地の巫女と其の呪法
    巫女の堕落と異流淙合—体系を立てることは困難—巫女の持った人形の二種—外法頭を持った巫女—人形を持った巫女—口寄の種類とその作法—生口と死口と神口—手向の水ということ—巫女の唱える神降しの呪文—ユリワカ説教と巫女—イタコのオシラ神の遊ばせ方—オシラ遊びの経文—各地方の市子と其の作法—羽後仙北郡の座頭嚊—陸中東山地方のオカミン—越後三面村の変態的巫術—常陸土浦地方のモリコ—信州の二三の市子と其の作法—大阪市天王寺村の黒格子—紀州地方の算所と巫女の関係—出雲地方の刀自ばなし
  • 第二節 報告で知り得たる各地の巫女と其の呪法
    諸報告に対する著者の態度—奥州のイタコと神附の作法—磐城に残る笹ハタキの呪文—暗示に富んだ貴重の資料—信州禰津の市子の口寄文句—その代表的のもの五種を挙げる—外人の見た巫女の作法とオシラ神—三州刈谷地方の市子と其の作法—美濃太田町附近の市子と作法—近畿地方の市子と性的生活—阿波美馬郡の市子と作法—土佐高知市の市子と其の呪法—筑前直方附近の市子と呪法—是等の諸報告に対する私見
  • 第三節 我国随一の巫女村の起伏
    角田氏の高示で知った巫女村—飯島花月氏の配慮を仰ぐ—信州の名族滋野氏の末路と巫女頭—禰津村の由来とノノウ小路—ノノウの養成法と抱主との関係—巡業中の収入と生活の一班—ノノウの性的生活と旅女郎—ノノウの階級とその遺物