日本巫女史/第二篇/第一章/第二節」を編集中

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'''二、霊魂観の進歩と口寄せ呪術の発達'''
'''二、霊魂観の進歩と口寄せ呪術の発達'''


仏教の渡来は、我国の霊魂観及び来世観に、一段の飛躍的進歩をなさしめた。神は人の死して祀られたもの、人は死ねば夜見の国に往くものと単純に考え、魂は荒魂と和魂とを体とし、奇魂と幸魂とを用とするものと漠然と信じていたところへ、仏教の高遠なる教理によって、分霊の思想を知り〔四〕、来世における地獄と極楽の生活を教えられたのは、全く一種の驚異として迎えたことと思う。而して此の霊魂観は、巫女をして、冥界に居る霊魂を、何時でも呼び出し、又は遠隔の地に居る生ける人の魂を招ぎ寄せて、これと自由に談話を交えることが出来るという思想を懐かせ、更にこれを呪術として発達させるまでに至ったのである。
仏教の渡来は、我国の霊魂観及び来世観に、一段の飛躍的進歩をなさしめた。神は人の死して祀られたもの、人は死ねば夜見の国に往くものと単純に考え、魂は荒魂と和魂とを体とし、奇魂と幸魂とを用とするものと漠然と信じていたところへ、仏教の高遠なる教理によって、分霊の思想を知り〔四〕、来世における地獄と極楽の生活を教えられたのは、全く一種の驚異として迎えたことと思う。而して此の霊魂観は、巫女をして、冥界に居る霊魂を、何時でも呼び出し、又は遠隔の地に生ける人の魂を招ぎ寄せて、これと自由に談話を交えることが出来るという思想を懐かせ、更にこれを呪術として発達させるまでに至ったのである。


勿論、此の呪術は古代の文献にこそ見えていぬが、霊魂の不滅を信じ、併せて幽界との交通を信じていた我が民族の間にも存していて、巫女が此の種の呪術を好んで行い来たことと想われるし、殊に道教の影響を受けて、次第に此の種の呪術も巧妙になったことと考えられぬでもないが、併しながら我国の巫女は屡述の如く神その者であり、又は神の代理者でもあって、霊媒者としても極めて狭義の活動に制限され、他界に居る死者の魂を自在に呼び出したり、遠方に在る生者の魂を随時に招ぎ寄せたりして、これと交話するというが如き広義の活動は為し得なかったのである。更に換言して、詳しく述べれば、我国の巫女は道教によって弦寄せ(即ち弓弦をたたいて神を寄せること)の呪術を知ったが、これ以外の口寄せの呪術は余り深くは知らなかったのである。それを仏教の霊魂観や来世観や、更に天台真言の両宗が行った加持祈祷の事相を学んで(是れには猶お修験道と巫女との関係を知らねばならぬが、それに就いては後に述べる)漸く口寄せの呪術を知るに至ったのである。
勿論、此の呪術は古代の文献にこそ見えていぬが、霊魂の不滅を信じ、併せて幽界との交通を信じていた我が民族の間にも存していて、巫女が此の種の呪術を好んで行い来たことと想われるし、殊に道教の影響を受けて、次第に此の種の呪術も巧妙になったことと考えられぬでもないが、併しながら我国の巫女は屡述の如く神その者であり、又は神の代理者でもあって、霊媒者としても極めて狭義の活動に制限され、他界に居る死者の魂を自在に呼び出したり、遠方に在る生者の魂を随時に招ぎ寄せたりして、これと交話するというが如き広義の活動は為し得なかったのである。更に換言して、詳しく述べれば、我国の巫女は道教によって弦寄せ(即ち弓弦をたたいて神を寄せること)の呪術を知ったが、これ以外の口寄せの呪術は余り深くは知らなかったのである。それを仏教の霊魂観や来世観や、更に天台真言の両宗が行った加持祈祷の事相を学んで(是れには猶お修験道と巫女との関係を知らねばならぬが、それに就いては後に述べる)漸く口寄せの呪術を知るに至ったのである。
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: 凡僧尼卜相吉凶{謂、灼亀曰、卜視地曰/相、占筮亦同(中略)。}及小道{謂、厭符之類也(中略)穴云、/小道、謂、符造左道是也云々}巫術{謂、巫者之方術、既是遙邪多端、不可具/言(中略)朱云、巫術、謂祭神而療病耳/云/々}療治者皆還俗、其依仏法持呪救疾、不在禁限{古記云、持呪謂経之呪也、道術符/禁、謂道士法也、今辛国連行是云々}
: 凡僧尼卜相吉凶{謂、灼亀曰、卜視地曰/相、占筮亦同(中略)。}及小道{謂、厭符之類也(中略)穴云、/小道、謂、符造左道是也云々}巫術{謂、巫者之方術、既是遙邪多端、不可具/言(中略)朱云、巫術、謂祭神而療病耳/云/々}療治者皆還俗、其依仏法持呪救疾、不在禁限{古記云、持呪謂経之呪也、道術符/禁、謂道士法也、今辛国連行是云々}


これに徴するも、僧尼の輩が巫女的呪術を行った事が知られると共に、仏教と巫道とが如何に密接に習合されていたかが窺われるのである。而して更に注意すべきは、前掲の最後の脚註に、『古記云、持呪謂経之呪也、道術符禁、謂道士法也、今辛国連行是』とある一節である。此の辛国連とは、有名な役行者(修験道の開祖と云われている)を讒して伊豆へ流したと伝えられている韓国連広足の一族と思われるので、此の頃において既に、仏教と巫道と修験道との三つが、相当に習合され混糅されていた事を証示する記事として、関心すべきものがある。「枕草子」に、見苦しきもの、法師陰陽師の<ruby><rb>紙冠</rb><rp>(</rp><rt>カミカウフリ</rt><rp>)</rp></ruby>して祓したると記し、「紫式部集」に、弥生の朔日河原に出でたるに、側の車に法師の紙を冠にして、<u>はかせ</u>だちたるを悪みと載せ、「宇治拾遺物語」巻十二に、爰に法師陰陽師、紙冠を被て祓するを見つけて云々とあり、更に「古今著聞集」に、藤原基俊が城外の道に小堂の在るを見て、六歳ばかりの小童にその名を問いしに「やしろ堂」と答えたので、基俊口吟に「此の堂は神か仏かおぼつかな」と云うと、小童とりあえず「ほうしみこ(法師巫)にぞ問ふべかりける」と下句を答えたとあるように、此の三者は殆んど区別することの出来ぬまでに、民間信仰としては融合渾成されたのである。
これに徹するも、僧尼の輩が巫女的呪術を行った事が知られると共に、仏教と巫道とが如何に密接に習合されていたかが窺われるのである。而して更に注意すべきは、前掲の最後の脚註に、『古記云、持呪謂経之呪也、道術符禁、謂道士法也、今辛国連行是』とある一節である。此の辛国連とは、有名な役行者(修験道の開祖と云われている)を讒して伊豆へ流したと伝えられている辛国連広足の一族と思われるので、此の頃において既に、仏教と巫道と修験道との三つが、相当に習合され混糅されていた事を証示する記事として、関心すべきものがある。「枕草子」に、見苦しきもの、法師陰陽師の<ruby><rb>紙冠</rb><rp>(</rp><rt>カミカウフリ</rt><rp>)</rp></ruby>して祓したると記し、「紫式部集」に、弥生の朔日河原に出でたるに、側の車に法師の紙を冠にして、<u>はかせ</u>だちたるを悪みと載せ、「宇治拾遺物語」巻十二に、爰に法師陰陽師、紙冠を被て祓するを見つけて云々とあり、更に「古今著聞集」に、藤原基俊が郊外の道に小堂の在るを見て、六歳ばかりの小童にその名を問いしに「やしろ堂」と答えたので、基俊口吟に「此の堂は神か仏かおぼつかな」と云うと、小童とりあえず「ほうしみこ(法師巫)にぞ問ふべかりける」と下句を答えたとあるように、此の三者は殆んど区別することの出来ぬまでに、民間信仰としては融合渾成されたのである。


かく仏教に導かれ、道教に誘われて、巫女の有していた固有の呪術は、漸を追うて失われ、形式も、内容も、道教化し、仏教化する余義なき道程を辿ったのである。「古事談」第三に、恵心僧都が大和の金峰山に正しき巫女ありと聞いて、ただ一人にて京都より同地へ赴き、心中の祈願を占えと頼みしに、その巫女の<ruby><rb>歌占</rb><rp>(</rp><rt>ウタウラ</rt><rp>)</rp></ruby>に『十億万土の国々は、海山隔て遠けれど、心の道だに直ければ、つとめて到るとぞきけ』と占うたので、随喜の涙を流して帰洛したとあるが、京まで盛名を馳せた正しき巫女にあっても、その言うところは全く仏臭き文句であった。他の正しからざる巫女の仏教化せる、又た以て知るべきである。
かく仏教に導かれ、道教に誘われて、巫女の有していた固有の呪術は、漸を追うて失われ、形式も、内容も、道教化し、仏教化する余義なき道程を辿ったのである。「古事記」第三に、恵心僧都が大和の金峰山に正しき巫女ありと聞いて、ただ一人にて京都より同地へ赴き、心中の祈願を占えと頼みしに、その巫女の<ruby><rb>歌占</rb><rp>(</rp><rt>ウタウラ</rt><rp>)</rp></ruby>に『十億万土の国々は、海山隔て遠けれど、心の道だに直ければ、つとめて到るとぞきけ』と占うたので、随喜の涙を流して帰洛したとあるが、京まで盛名を馳せた正しき巫女にあっても、その言うところは全く仏臭き文句であった。他の正しからざる巫女の仏教化せる、又た以て知るべきである。


'''三、巫女の守護神から帰依仏への過程'''
'''三、巫女の守護神から帰依仏への過程'''
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