日本巫女史/第二篇/第一章/第二節」を編集中

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後世の巫女の中で、或る流派に属する者は、イラタカの珠数と称する物を所持していて、他の巫女が弓弦をたたき、又は笹の葉で顔をたたきながら、呪文を唱えて神降ろしをするように、その数珠の<ruby><rb>珠</rb><rp>(</rp><rt>タマ</rt><rp>)</rp></ruby>を手で一つ一つ繰りながら神懸りの状態に入る方法を執っている。私の寡聞では、現在イラタカの珠数を用いる巫女は、秋田県を中心としている「座頭嬶」と称する巫女及び宮城・岩手両県のイタコの外には余り多くを耳にせぬが、併し関東を中心とした巫女も、彼等の仲間で「切り珠数」と称して、普通の珠数を中央から切り放した様な物を用い、然もこれで占う事を俗に「珠数占」と言っている所を見ると、古くは奥州のそれの如く、イラタカの珠数を用いていたのではないかと考えさせられるのである。
後世の巫女の中で、或る流派に属する者は、イラタカの珠数と称する物を所持していて、他の巫女が弓弦をたたき、又は笹の葉で顔をたたきながら、呪文を唱えて神降ろしをするように、その数珠の<ruby><rb>珠</rb><rp>(</rp><rt>タマ</rt><rp>)</rp></ruby>を手で一つ一つ繰りながら神懸りの状態に入る方法を執っている。私の寡聞では、現在イラタカの珠数を用いる巫女は、秋田県を中心としている「座頭嬶」と称する巫女及び宮城・岩手両県のイタコの外には余り多くを耳にせぬが、併し関東を中心とした巫女も、彼等の仲間で「切り珠数」と称して、普通の珠数を中央から切り放した様な物を用い、然もこれで占う事を俗に「珠数占」と言っている所を見ると、古くは奥州のそれの如く、イラタカの珠数を用いていたのではないかと考えさせられるのである。


而してイラタカの珠数に就いては、昔から学者の間に異説があり、イラタカとは珠数の<ruby><rb>梵語</rb><rp>(</rp><rt>サンスクリット</rt><rp>)</rp></ruby>だなどいう考証があるが〔一二〕、これは修験者が用いた<ruby><rb>最角念珠</rb><rp>(</rp><rt>イラタカノネンジュ</rt><rp>)</rp></ruby>と同じ語原で(但し修験が先きで巫女が後か、或は此の反対に巫女が先で修験が後かは後に述べる)あろうと思う。そして此の珠数は挿入の写真で示したように、私の見たものは、長さ八尺、<ruby><rb>無患子</rb><rp>(</rp><rt>ムクロジ</rt><rp>)</rp></ruby>の珠の数は三百を本義とし([[:画像:イタコが持つイラタカの珠数.gif|写真]]のは5つほど失われている)、別に「装束」と称して双方の<ruby><rb>房</rb><rp>(</rp><rt>フサ</rt><rp>)</rp></ruby>の所に、羚羊の上顎骨、狐の上顎骨(下顎骨を用いぬのは見た眼が悪いからだという)、羚羊の角、熊の牙、鷲の爪、及び鷹の爪、貝が二つ、これに変り銭(絵銭及び文字の異った変り銭)と、秋田藩で発行した鍔銭とが着けてあった〔一三〕。此の珠数は是を用いる巫女にとっては、唯一の呪具であると同時に、呪力の根元となっているのであるから、常に尊崇して、座右を放さず、師匠が死ぬ時に弟子に伝え、以て法統の霊物としたのである。これに反して、切り珠数の方は頗る簡単であって、珠は普通のと異り、丸くなくしてやや平たく、恰も十露盤珠のようで、数は日本総国を象り六十六とし、外に日神月神を象って、水晶の大きい珠を二つ加えている〔一四〕。珠数の説明はこれで大体を尽したが、さて問題となるのは、巫女が此の種の珠数を呪具として用いたのは、仏法に学んだのか、修験道に教えられたのか、それとも巫女独特の理由があったのか、三つのうちどれが正しいかと云うことである。
而してイラタカの珠数に就いては、昔から学者の間に異説があり、イラタカとは珠数の<ruby><rb>梵語</rb><rp>(</rp><rt>サンスクリット</rt><rp>)</rp></ruby>だなどいう考証があるが〔一二〕、これは修験者が用いた<ruby><rb>最角念珠</rb><rp>(</rp><rt>イラタカノネンジュ</rt><rp>)</rp></ruby>と同じ語原で(但し修験が先きで巫女が後か、或は此の反対に巫女が先で修験が後かは後に述べる)あろうと思う。そして此の珠数は挿入の写真で示したように、私の見たものは、長さ八尺、<ruby><rb>無患子</rb><rp>(</rp><rt>ムクロジ</rt><rp>)</rp></ruby>の珠の数は三百を本義とし(写真のは5つほど失われている)、別に「装束」と称して双方の<ruby><rb>房</rb><rp>(</rp><rt>フサ</rt><rp>)</rp></ruby>の所に、羚羊の上顎骨、狐の上顎骨(下顎骨を用いぬのは見た眼が悪いからだという)、羚羊の角、熊の牙、鷲の爪、及び鷹の爪、貝が二つ、これに変り銭(絵銭及び文字の異った変り銭)と、秋田藩で発行した鍔銭とが着けてあった〔一三〕。此の珠数は是を用いる巫女にとっては、唯一の呪具であると同時に、呪力の根元となっているのであるから、常に尊崇して、座右を放さず、師匠が死ぬ時に弟子に伝え、以て法統の霊物としたのである。これに反して、切り珠数の方は頗る簡単であって、珠は普通のと異り、丸くなくしてやや平たく、恰も十露盤珠のようで、数は日本総国を象り六十六とし、外に日神月神を象って、水晶の大きい珠を二つ加えている〔一四〕。珠数の説明はこれで大体を尽したが、さて問題となるのは、巫女が此の種の珠数を呪具として用いたのは、仏法に学んだのか、修験道に教えられたのか、それとも巫女独特の理由があったのか、三つのうちどれが正しいかと云うことである。


これに対する私見を簡単に述べれば、既記の如く我国の巫女は、遠き狩猟時代から、或る種の獣骨禽爪等が呪力を有していることを知っていて、常にそれ等を所持していたのである。詳言すれば、意外なる豊猟によって獲たる、獣骨禽爪(骨爪は禽獣の象徴である)を所持していると、幾度でも豊猟を獲させてくれる(一種の交感呪術である)という信仰を持っていたのである。而して此の獣骨禽爪等の元の意味が忘られて、装身具となれば、即ち曲玉となって(曲玉の古い物が腎臓であることは既述した)、男女の胸辺に懸けられるようになったのであるが、此の間において、独り巫女だけ、古き伝統のままに(元の意義は忘れても)獣骨禽爪等を所持していたところ、仏教の渡来によって珠数を知り、ここに獣骨禽爪等の処置に就いて、<ruby><rb>何時</rb><rp>(</rp><rt>いつ</rt><rp>)</rp></ruby>の間にか二派を生じ、一派は珠数に真似てこれを造り用い、一派はそれを「外法箱」のうちに蔵して用いるようになったものと考える。此の観点から云えば、修験の最角念珠は、却って巫女のそれを模倣したのではないかとさえ思われるが、併しこれは<ruby><rb>筆序</rb><rp>(</rp><rt>ふでついで</rt><rp>)</rp></ruby>に記すべきような簡単の事ではないから、姑らく留保する。
これに対する私見を簡単に述べれば、既記の如く我国の巫女は、遠き狩猟時代から、或る種の獣骨禽爪等が呪力を有していることを知っていて、常にそれ等を所持していたのである。詳言すれば、意外なる豊猟によって獲たる、獣骨禽爪(骨爪は禽獣の象徴である)を所持していると、幾度でも豊猟を獲させてくれる(一種の交感呪術である)という信仰を持っていたのである。而して此の獣骨禽爪等の元の意味が忘られて、装身具となれば、即ち曲玉となって(曲玉の古い物が腎臓であることは既述した)、男女の胸辺に懸けられるようになったのであるが、此の間において、独り巫女だけ、古き伝統のままに(元の意義は忘れても)獣骨禽爪等を所持していたところ、仏教の渡来によって珠数を知り、ここに獣骨禽爪等の処置に就いて、<ruby><rb>何時</rb><rp>(</rp><rt>いつ</rt><rp>)</rp></ruby>の間にか二派を生じ、一派は珠数に真似てこれを造り用い、一派はそれを「外法箱」のうちに蔵して用いるようになったものと考える。此の観点から云えば、修験の最角念珠は、却って巫女のそれを模倣したのではないかとさえ思われるが、併しこれは<ruby><rb>筆序</rb><rp>(</rp><rt>ふでついで</rt><rp>)</rp></ruby>に記すべきような簡単の事ではないから、姑らく留保する。
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